カウンセリングでわかったネガティブとポジティブ
カウンセリングは基本的にご相談者さまが感じたことや思っていることを好きに話してもらうようにします。
これは傾聴と呼ばれる手法です。
傾聴のポイントは、聞くことではなく、話すことで話し手自身が心の整理をすることにあります。
人間はとても上手にできており、モヤモヤとした感情などに対してストレスを感じます。しかし、誰かに話をすることにより、より相手に今の自分を理解してもらいたい、という無意識の力が働きます。
すると、脳は論理的に相手に伝わりやすいように事象を整理します。
この状況を作ることが傾聴なのです。
今回のケースでご相談者さまは辞めてしまった同僚介護士について不満を話されていました。
介護士の不満が終わると、施設の現状に関する不満が始まりました。
施設の不満が終わると、自分自身の置かれた立場について不安であることを話されました。
そして入居者さまの介護がとても好きであること、今の現場がとても好きであることを話はじめました。
これはポジティブ思考になります。
カウンセリングにおいてはまずネガティブな話から始まります。そして、ある程度時間が経過するとポジティブな話が出始めます。
これは鉄板の法則と言えます。
カウンセリングで出した結論
ネガティブとポジティブが混在し始めるとカウンセリングは第二フェイズに入ります。
私はここである質問をしました。
「今の現場で頑張るのか?それとも転職を考えるのか?についてじっくりと考えてみてはいかがですか」
ご相談者さまはこの質問を訊くと一瞬顔が曇りました。
これは、ご相談者自身もそのことに悩んでいるからだと分析しました。本当の悩みは「転職」をするか否かであることがここで明確になります。
そこで転職の是非を出すために必要な要因について多角的に考えられるようにいくつかの設問を作りました。
・施設が求人などを積極的に行っているのか?
・会社の改善策に納得はいっているか?
・同僚とのコミュニケーションはうまく言っているか?
・これからの人生設計を考えて今の現場は妥当なのか?
このような設問を20項目ほど作り、時間があるときにやってくださいとお伝えしました。
設問には直感的に回答するように指示をだしました。そして、次回のカウンセリングで回答に対して傾聴を行いました。
後から聞いたのですが次回のカウンセリング時にはすでに自分の方向性が見えており活動準備段階に入っていたそうです。
ご相談者さまは自分の答えを何度も見返して自分なりの結論を出していたのです。
さて、前後しましたが、ご相談者さまは転職することを選択しました。
転職に至った経緯がこちらです。
・会社が今の状況を真剣に改善しているとは思えなかった
・入居者さまに満足なサービスが出来ないことにどうしても納得が出来なかった
・自分の責任以上の問題についてあきらめることも大事だと思えた
・このままでは自分の人生が崩れてしまう危機感が実感できた
・介護士として自分の理想に近いところで働きたい
同時に最後まで転職という手段に出ることにためらいがあった要因がこちらでした。
・転職することは、入居者さまから逃げることなのではないか?
ご相談者さまは介護士としての誇りを持っています。それは「仕事」としてのプライドであることと理解したのです。
仕事である以上、自分のスキルを磨くためには環境の変化も必要であるとの結論を出したのです。同時に今ある環境の改善は自分の責任の範疇ではないということも理解されたのです。
これはとても大事なことです。
介護職は時にボランティアになりがちな側面を持っています。しかし仕事である以上、対価と見合わないのであれば転職という選択肢を行使することは介護士が持つ権利なのです。
それは逃げることではないのです。逃げるとはネガティブです。しかし自分のスキルを磨きたい、より利用に近い環境で働きたいと考えるのはポジティブです。
ポジティブな考えから導き出された結論というのはとても強いものです。
ご相談者さまはこの後、2か月後に転職され今は世田谷区のある介護付き有料老人ホームで働いています。
カウンセリングは終了していましたが、転職してからしばらくしてご連絡をいただき改めて来談の時間を取りました。
すると、前職で得た知識や経験が今の現場でも役になっていること、新しく覚えなければならないことが楽しくて仕方がないとポジティブな話が目立ちました。
完全に立ち直っていることが理解できました。
新しい環境で元気に頑張っている姿を見ることが出来たことは、カウンセラーとしてとてもうれしく思いました。
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