渋谷相談室でいじめによる相談
残念ながら介護業種にも「いじめ」は存在します。
今回は介護福祉士から新人いじめに遭ってしまっているご相談者さまからのカウンセリングケースとなります。
世田谷区で働く30代男性介護士
転職して1か月ほどして先輩の介護福祉士からのいじめが激化してしたことに疲れてしまった介護士さまからのご相談となりました。
働いていた介護現場では仕事量と給料が見合っていないため、転職サイトを通して転職した介護士さまですが、転職先の現場で一番長いキャリアを持つ介護福祉士から執拗に嫌みを言われてしまう事態に発展。
最初こそ、丁寧だったものの事あるごとに介護方法について指導されてしまい強い言葉での罵倒、ご入居者さまの前で執拗に怒るなどの行為が重なり精神的に悩んでのカウンセリング予約でした。
あんたダメだ、辞めなよ
ご相談者さまは匿名でのカウンセリングを希望されていました。当カウンセリングでは匿名でのカウンセリングもお受けしており全体の3割程度が匿名希望によるカウンセリングです。
ご予約時に匿名でのカウンセリングをご希望されていたため、来談時のご予約名も匿名となりました。
最初、電話カウンセリングを希望されていたのですが直前になって来談カウンセリングに変更となり以降、渋谷相談室にて来談カウンセリングを行いました。
介護士さまは特養(特別養護老人ホーム)で働いていましたが給料や待遇面で転職されました。介護士転職サイトに登録をしたところ3社から好条件での引き合いをいただきその中の1社に決定し転職しました。
働き始めた最初こそ戸惑いはあったものの特養での経験はすぐに役立つこととなり1か月足らずで通常業務にも慣れてきました。
しかしそのころからある先輩介護福祉士からのいじめともいえるような発言が目立ってきたのです。
最初こそ丁寧な口調で指導と言える内容でしたが日を追うごとにその内容は激しさを増し、現在では大声での罵倒、ご入居者さまの前で執拗にののしるといった行為が目立ち始めました。
カウンセリングではその発言についてヒアリングをしました、するとかなり激しい口調であることがわかってきました。
「おまえさー、何年この業界にいるの?まだそんなやり方してるの?」
「あのね~、何回言ったらわかるの?バカじゃないんだからいい加減学べよ」
「おまえダメだな、もうやめろよ」
「みんなお前の仕事が遅いって裏で言われてるの知らないの?」
「ご利用者さまのお気持ちを全然わかってないよな。前職のレベルが知れるわ」
日ごとに激しさを増すこうした発言を受けて耐えられなくなり、施設長に相談をしたところ、過去にも同様のケースがあったので調査します、との言質をもらいました。
そして1週間後に改めて施設長から報告が挙がってきました。その内容に驚きを隠せなかったそうです。
施設長はご相談者さまがご入居者さまを虐待していると言ってきたのです。
もちろん、ご相談者さまは虐待などしていませんでした。時間が無い中、ご入居者さまに傾聴し意思を尊重するような介護を心がけていました。
しかし、介護福祉士は施設長からのヒアリング時に、事実を曲げた報告をあげていたのです。あくまでも介護福祉士は特養でのやり方はこの施設では合わないので指導した、と主張していたのです。
施設長はまずそのような事実があったのかを確認してきたので、全く事実と異なることを伝えました。すると、理解は示してくれたのでほっと安心したのも束の間、
「施設では協調が必須になります。指導されてしまうのはアナタ自身にも問題があるからということは理解してもらいたいです。」
と言ってきたそうです。
ただ、ご相談者さまは自分のどこに問題があったのかが全く分からず、同僚に訊いても仕事について問題はなく、人材不足の中、入社してくれたことに感謝していると言ってくれていました。
問題の介護福祉士だけがご相談者さまに「指導」名目の発言を繰り返していました。
そのことを施設長に話をすると、改めて両者に話を伺います、としてその日は終わりました。
業務に戻ると、問題の介護福祉士から呼び止められ、
「何をやってるのか知らないけど、あんたが悪いのにそのことを棚に上げてよく言うわ。」
と言ってきたそうです。そして、その日から指導名目でご相談者さまが介助しようとすると、くっついてきては指導するようになってしまったそうです。
当然ながらその介護福祉士にも業務があるのですが、その業務のいくつかはご相談者さまにやるように言いつけてきました。
仕事が増えてしまい時間内に終わりそうになると、
「こんなくらいの仕事で残業申請するなよな、自分の仕事が遅いんだから」
とまくし立ててきます。
同僚もその様子を見てはいるのですが面と向かって助けてくれるということはなく、かわいそうだ、といった表情でみるだけでした。
カウンセリングでは問題の介護福祉士が発言した罵詈雑言を胸の内から吐き出すことがメインとなりました。
カウンセラーとしてご相談者さまの心の内を聴くことはとても大切なことです。
黙って、話を聴くことに終始します。
カウンセリングが継続されてくる中で、ご相談者さまは時折、涙することもありました。
涙を流す行為は心が整理に入ったことを意味します。
本当にストレスが溜まってしまっている時、人は涙を見せる余裕もなくなります。
たいていの場合、口数が減り、下を向くようになります。口数が少ないことはとても危険な状態なのです。
鬱傾向が強くなると上記の症状から、目がうつろになることが多くなります。
目がうつろになってしまうと、精神的にはかなり重い症状と言えます。仕事でのミスにつながりやすくなるばかりではなく、突発的な行動に出ることもあります。
実はご相談者さまはカウンセリング当初、問題の介護福祉士の発言について真面目に考えておりなんとかしようと強く思っていました。
しかし、数回のカウンセリングを経てそれが「いじめ」であると確信しました。
モヤモヤとした感情が「いじめ」としてカテゴライズされたことにより、心の中に整理が生まれます。
ご本人さまがいじめと断定したことに対してカウンセラーが何かを指示することはありません。
しかしご相談者さまの中ではある種の自己防衛行為が生まれてきます。
次ページでは介護専門のカウンセリングでできること、してはいけないこと、カウンセリング内容についてご説明します。