自己防衛手段の確立
カウンセリングでご相談者さまからある種の発言がありました。
「私が受けているこうした仕打ちはいじめであると思っています。いじめられていることが分かったので相手の会話を録音しようと思うのですがいかがでしょうか」
カウンセラーとして肯定も否定もできません。こうした発言については、
「ご自身でそれが良いと思うのであればやってみることも心の整理につながります」
といった回答になります。
ご相談者さまがその後、会話を録音していたかについてこちらから確認することはありません。ただ、この発言があってからカウンセリング内容に少し変化が生じてきました。
それは、これまでネガティブな発言が多かったご相談者さまの中にある種の自信が見えるようになってきたのです。
これは大きな進歩です。
ご相談者さまが介護の仕事について自信を持ち始めた発言として、
「ご入居者さまから笑顔で頑張ってね、といわれました」
「同僚から負けないでください、といわれました」
「おむつ交換などでご入居者さまから、アナタにしてもらいたいといわれました」
など、ポジティブな発言が出るようになったのです。こうしたポジティブな発言が増えてくると鬱傾向は小さくなります。
ただし、気を付けなければならないのはそれが何かをするための準備期間になってしまうことです。
カウンセラーとしてその点には細心の気を配りました。今回のケースではその予感は的中してしまいました。
退職という決断
カウンセリングは月に1、2回程度ですが、ポジティブ発言が出るようになってからカウンセラーとしてご相談者さまの中に、別の意図が隠れていないかについて注意をはかるようにしていました。
例えば、何か大きな行動を起こすために今の状況を耐える、というのは根本的な改善ではありません。
カウンセリングでご相談者さまはある決断をされたことを報告してくれました。
それまで働いていた職場を今月末で退職することになったそうです。
晴れ晴れとした顔で入室してきたので何かあったことはすぐにわかりましたが、退職という結論を出されたのです。
そして、ご相談者さまは続けてこう発言されました。
「前に録音する話をしたと思いますが、あれから毎日会話を録音していました。実はあの時から職探ししてまして来月から別の施設でお世話になることが決まったので今日、報告に来ました。」
「それからあの介護士ですけど、あれからも毎日のように私にひどいことを言っていたのですが、会話を全て録音していると思うと気が楽になって何を言われても落ち込むことが無くなりました。私は録音してよかったと思ってます。」
「あと、辞めることを施設長に伝えたときにその場で撮りためた録音の中でひどいと思える部分をまとめて施設長に聞いてもらいました。施設長はそれを聞いて真っ青な顔をしてましたし、録音をどうするつもりかばかり気にしていました。だから、わたしは録音は別に何かしようと思って録ったものではありません。でも施設長がこの録音を聞いて今後、私みたいな人が出ないようにしてくれたらいいと思います。といいました。」
「それから先生のカウンセリングには本当に助けられました。聞いてもらってどれだけ気持ちが楽になったかわかりません。録音は先生には間違いとか思うかもしれませんが、私が立ち直るために必要だったと思ってます。最初は労基にそれもってパワハラ認定してもらおうと思いましたけど、メリット無いのでやめました。」
矢継ぎ早に言葉を発するご相談者さまに疲れや悩みの顔はありませんでした。
ここまでしっかりと話をされることだけを考えればカウンセリングは効果をもたらしたと言えるでしょう。最後にご相談者さまはこう続けました。
「たしか私がOKと言えば相談事例としてこの内容を記事にしてくれるんですよね?それだったら是非、事例としてホームページに載せてください。たぶんですけど私と同じような経験をしてる人はたくさんいると思います。そんな人に私がしたことを伝えてください。お願いします。」
新しい職場に移ってからも定期的にカウンセリングを行っています。
ご相談者さまは新しい職場で同僚にもなじみ、毎日が充実していることがわかりました。
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