傾聴と分析

初回のカウンセリングではご相談者さまが思われていることを聞くことからスタートします。これはすべてのカウンセリングで同じことです。

ご相談者さまがどのような気持ちで話をされているか、どのような事案が発生しているのかなどを時間軸、感情軸、対象者の分別などを考慮しながらヒアリングすることで現状を分析します。

今回のケースで浮彫になった懸念事項がこちらです。

・家にいてリラックスできない
・ルールが細かすぎて息が詰まる
・自分の家でもあるのになぜここまでいわれるのか
・可能であれば顔を合わせたくない
・同居するのが困難であれば施設に入ってもらいたい
・何をどうすればよいか分からない

カウンセリングは「何をどうすればよいか分からない」という言葉が良く出ます。何をすべきかかが分からないというのはストレスの発生要因として大きな理由となります、したがってこの部分をどう解消するかが今回のポイントとなります。

整理すると、家にいてもリラックスできない、というのは感情です。その要因がルールが細かすぎるということです。

同時に、自分の家なのになぜそこまで言われるのか、顔を合わさないことで息が詰まることを解消できるのかといった疑問と解決策が入り混じっています。

さらに、施設に入ってもらいたい、というのは顔を合わせたくないの発展形として、「排除」の感情が強くなっていることを表します。

言動が時系列に合わなくなってきた

カウンセリングで日々の出来事などをヒアリングしながら私が感じたのは、お母さまの言動が時系列にそぐわなくなってきた点でした。

例えば、退職して1年以上も経過しているにもかかわらずある日突然、お着替えをして、

「これから会社に行ってきます。夜は遅くなるので夕飯入りません」

と、ご相談者さまに発言されたり、

「あの会社の株を全部売ろうと思うのだけれど株券はどこの銀行に預けてあるかしら」

と、何年も前に処分した株の話をしたりすることが増えてきたのです。

ご相談者さまもおかしいな、と感じてはいたそうです。

カウンセラーとして、お母さまの言動が厳しくなった背景には認知症の発症があるのではないかと感じました。そこで、介護に携わっていたものとして認知症検査をしてもらうことをアドバイスしました。

結果は軽微ではありますが認知症を発症していることがわかりました。
※認知症が進行して老人ホームへの入居を決断された深沢の相談事例がございます。詳細については「老人ホーム探しをはじめた奥さまからの入居相談」にて紹介しております。

それによりこれまでの事例の整理ができました。

まず、ルールに異常に厳しくなっているのは認知症特有の事象であること、時系列がおかしくなってきているのは認知症が進行状態であることです。

一般的なカウンセリングでは傾聴に終始するためこのようなアドバイスは行いません。これは介護に特化したカウンセリングだからこそできることです。

介護疲れに関するカウンセリングでは悩みの根底に認知症が関係することが多くあります。通常のコミュニケーションと異なることがストレスになるケースが多いのです。

ご相談者さまにそのことをご説明すると、これまでのお母さまの行動、言動を振り返ると認知症だから、という理由で納得できる部分が多々あることを理解されました。

ご相談者さまの中に「認知症だから仕方がない」という「理解」が生まれたことで心の整理が始まりました。

【深沢】同居の母親の猜疑心が強くなり神経質になってしまった

解決策の模索

カウンセリングにより心の整理が生まれたことで一定の効果は生まれました。しかし、まだ解決ではありません。

日々、お母さまから言われるお小言が解決したわけでは無いので根本的な解決にはなりません。

カウンセリングでも理解はできていてもやはり、リラックスできない、細かすぎる、顔を合わせるのが苦手という点については解消されていませんでした。

認知症を発症していることからケアを介護サービスで賄うことを提案しました。これには2つの意味があります。

1.ご相談者さまの自由時間を作ることでリラックスできる時間を作る

2.介護サービスを使うことでお母さまにも一定の理解を得る

受け答えもハッキリしており、身体的な介護が必要ないことから訪問介護がベストであると考え、そのようなサービスがあること、介護保険法の仕組みなどを説明しました。

介護疲れとなっているご家族さまの多くは解決策が介護サービスの利用と理解していてもどのようなサービスが適切であるか、料金面でどのような仕組みとなっているのかなどが分からないことが多いからです。

カウンセラーとして介護疲れの解消においてこうした介護サービスの情報を提供することはカウンセリングの範疇であると考えています。

ご相談者さまは訪問サービスの利用を検討されました。

訪問介護を利用するには条件があります。65歳以上で要介護1以上の認定を受けているか、64歳以下で指定されている特定疾病のいずれかに該当していることとなります。

認知症検査のアドバイスと併せて要介護認定の検査をすることをお勧めしていました。結果は要介護1との判定でした。

これにより訪問介護の利用対象者としての条件をクリアしていました。

早速、訪問介護を使ってみると、その間の時間を有効に使うことが出来たそうです。また、訪問される介護士さまとご相談者さまがお話をされることで他にも同じような高齢者がいること、在宅介護で疲れているご家族さまがたくさんいることを知ったそうです。

訪問介護が入っている間、ご相談者さまには自由な時間が出来たことで気持ちの切り替えができるようになったことでストレスはかなり緩和されました。

また、お母さまも介護士が介入することでご自身が高齢者になっていることを理解し、少しではありますが自身が認知を発症していることも理解しているようでした。

介護のプロが介入することでお母さまの言動にも一定の変化が見えてきました。

それまで何かにつけてルールを優先させるような発言があったのですが、介護士が柔らかく受け答えすることで感情の起伏が穏やかになったのです。

また、介護士さまが来る日を楽しみにするようになり、ご相談者さまに介護士とのやり取りについて話をするようになってきました。

双方向のコミュニケーションを取るようになると人間は相手に合わせようとする意識が働きます。

一時期は猜疑心が強く、他人を信用しないような発言を繰り返していたお母さまですが訪問介護の利用から1か月もすると猜疑心に関する発言はだいぶ少なくなってきたことがわかってきました。

合わせてご相談者さまのストレスも解消されてきたことが分かりました。

以前は施設に入ってもらいたい、顔を合わせたくないという気持ちが前面に出ていましたが今は、同居に対して理解が生まれていたからです。

その発言を受けてカウンセリングを終了とさせていただきました。

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