息子さまの気持ちの整理
現状の洗い出しが出来たことは息子さまにとって大きな意味を持ちました。息子さまは自傷行為についてのみ心配していましたがご自身で同居するようになってからの4年間をカウンセラーに話すことで、お母さまの心境の変化に着目することに気づかれました。
息子さまはまずお母さまと積極的に話すことを心がけました。奥さまも同様に話しかけることでお母さまとコミュニケーションをとるような対策を立てられました。
しかし、お母さまに大きな変化はありませんでした。
短期間で目覚ましい変化はないということは説明いたしましたが、現況に変化が無いため漠然とした不安と何かあったら、という心情がストレスを生み出しているようでした。
そこで、息子さまにどうされたいのか、どうすべきなのかを伺ってみました。
息子さまと奥さまはご自宅で今後について話し合いをされており、結論が出ていることがわかってきました。しかし、それを実行することに対する躊躇があることも分かったのです。
結論がこちらです。
・話し相手がいないことが問題
・自傷行為を見つけられる環境が整っていない
・部屋にこもってしまうことが問題
このことからご夫婦では施設への入居という選択肢を視野にいれていました。しかし、お母さまを施設に入居させることに対して躊躇していたのです。
部屋にこもり話もしなくなってしまっていたためお母さまの真意を聞き出せていなかったからです。
また、施設への入居と言ってもどのような施設があるのか、費用がいくらなのか、何から始めればよいのか分からないこともストレスの一因となっていました。
カウンセラーは基本的にこちらから指示を出すことはありません。あくまでも相談者さまが話をすることでご自身がすべきことを整理することがカウンセリングの本懐だからです。
しかし今回のケースでは息子さまが具体的な対策方法を決めており、必要なことは情報収集であることがわかりました。
そこでカウンセリングを行いながら必要な情報を提供するプログラムを組み上げました。
カウンセリング+情報の提供が当カウンセリングの専門性
当サイトは介護する側の悩みに寄り添うカウンセリングを行っておりますが、同時に介護職員として働いてきた経験や知識が必要であると判断した場合はカウンセリングと併せて相談者さまに情報の提供も行います。
今回のケースでは、施設への入居という息子さまの決定に必要な情報提供が大きな役割を持ちました。
やるべきことが明確化したことで息子さまのストレスが軽減されていくことがわかりました。
まず、お母さまに施設入居に関するお話をされました。お母さまは施設入居を拒否すると思っておられましたが話をするとお母さまは施設入居に対してそれほど抵抗感を持っていないことがわかりました。
ただ、見ず知らずの人たちがいる中で生活できるのかを心配されていたのです。
そこでショートステイのご説明を行いました。ショートステイとは在宅介護でどうしても介護できない時など、施設に1週間ほど預かってもらうことを目的としたサービスですが、入居を検討している施設を体験する側面も持っています。
どんなタイミングで自傷行為が発生するか分からない以上、介護士による見守りが出来なければなりません。
特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームなど施設型の老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が好ましいと判断しました。
しかし、特別養護老人ホーム(特養)は要介護3以上の高齢者でなければ入居は難しくなります。お母さまは認知が無く、要介護ではありませんので対象外となります。
残るは有料老人ホームとサ高住となります。
どちらもショートステイサービスを行っており体験入居が可能です。
息子さまには介護職員として10年以上業界に従事してきた経験や知識を使って施設の種類や費用、どのような違いがあるかなどをご説明しました。
こうした情報の提供は本来カウンセリング業務ではありませんが、介護専門のカウンセリングではこうした業務が効果を上げることがあります。
情報の提供がもたらした効果は、息子さまが何をすればよいか分からない施設入居に関する漠然とした不安感の払しょくにつながっていました。
ご夫婦が懸念していた問題をクリアできる施設型の老人ホームを探すことで介護する側がもつ不安を解消することができました。
・問題であった自傷行為は施設型の老人ホームで介護士が見守りをすることで防ぐことが出来ます。
・施設が積極的にコミュニケーションをとるような生活プランを作ることで話し相手を見つける対策が可能となります。
・大きなダイニングルームに入居者さまが集まって食事をすることで部屋にこもりきりになることを防ぐような対策が施されている施設型の老人ホームを探しました。
・入居者さまが集まって体操をしたり、歌を歌ったり、カードゲームをするなどアクティビティが充実している老人ホームを探しました。
お母さまが施設に入ることに協力的であること、施設に関する知識が蓄えられたことで息子さまはお母さまを施設へ入居する結論を出されました。
介護問題専門のカウンセリング
今回のようなケースは昨今、増えてきております。
当カウンセリングが介護問題に特化しているのは、介護に関する知識や経験が介護問題を抱えているご家族さまに有効であるからです。
複雑な介護保険法の理解や、施設ごとの特徴は介護業界に従事しなければ身につきません。
介護するご家族さまが抱えている介護問題には介護システムが分からない、何から始めればよいのか分からないなど介護業界に関する知識不足がストレスの要因になることがあります。
こうした悩みを解決するには介護業界に精通しているカウンセラーでなければ問題の抜本的な解決にはなりません。
介護に特化したカウンセリングとはカウンセラーとしての能力と、介護に関する知識と業界経験が合わさることで効果的になるのです。
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