問題を理解し心を整理する
奥さまもご自身が通常の精神状態ではなくなってきていることをご理解されておりましたので、週に1回の頻度でカウンセリングを行うことになりました。
4回目のカウンセリングで奥さま自身の発言がハッキリと変わってきたことが認識できました。
それまで奥さまは、思ったことを話すような話し方だったのですが、4回目のカウンセリングではご自身の行動や感情に対して振り返りをするようになりました。
これは心が発言に対して整理を始めた証拠となります。
漠然とした不安や嫌悪感というものはストレスに直結します。
物事が自分のキャパシティを超えてしまったことに心が対応できなくなるからです。
結果として「疲れ」がストレスを生み出します。
お独りで考えて解決される方もいらっしゃいますが在宅介護というこれまでに経験したことが無い分野でのストレスであるため、心の整理が追い付かずストレスが深刻化していたのです。
奥さまのケースはまさにその典型と言えました。
在宅介護では「思い」と「現実」が大きなギャップとなることがほとんどです。
思っていたより大変だ
人間は年を取ります。年を取ればそれまで出来たことが出来なくなることもあります。
奥さまは一般的な日常生活と明らかにかけ離れた状態に戸惑っていたのです。
そのことをご理解されてきたのでカウンセリングは第二フェイズにはいりました。
在宅介護から老人ホームへ
通常のカウンセリングでは前段階で一端の終了となります。
しかし、介護に特化した心理カウンセリングプログラムではここから先があります。
それが、
問題の解決
です。
今回のケースでは奥さまはご自身が暮らしている自宅でご自身の範疇を超えてしまった事象に対して受け入れることが出来ないという判断をされていました。
つまり、在宅介護の継続が難しいという結論をご自身で導き出されたのです。
しかし、どうすればよいのかについてハッキリとした答えが出ていませんでした。
頭の中ではデイサービスや老人ホームといった選択肢は存在していますが、どれがベストな選択か分からなかったのです。
そのことがまた別のストレスを生み出す要因になってしまいます。
そこで奥さまが導き出した「在宅介護の終了」に対して、
「どのような対応がベストなのか」
を、導き出すのが第二フェイズとなります。
私はカウンセラーであると同時に介護職員として長年、高齢者施設で働き管理運営及び現場での介助作業を行ってきました。
またたくさんの入居者さまやそのご家族さまと接してきたノウハウの中から、奥さまがどのような結論となるのかについていくつかのパターン分析を行いました。
第二フェイズでは心の整理と併せて、解決策を見つけるための具体的なアプローチが必要となります。
現在、日本では数多くの介護サービスが存在しています。
認知症の入居者さまが暮らすグループホーム、在宅介護のサポートを行うデイサービスや入浴サービス、いわゆる老人ホームとその選択肢は様々です。
奥さまはご主人のお母さまであることを考慮しており、デイサービスや入浴サービスといった在宅介護の延長であるサービスを選択しようとされていました。
しかしカウンセリングを続けていくうちに本能的には、ご自宅を介さない介護の選択を望まれていることに気づかれました。
これまでの生活に戻りたい。
根底にはこの気持ちがずっとあったのです。
介護付き老人ホームへの入居という結論
何度目かのカウンセリングの後、奥さまはご主人さまと話し合って結論を出されました。
それが、
介護付き有料老人ホームの利用
でした。
できるだけ近場の施設で面会がしやすいこと、費用面の算出などを試算し、認知が進行しても長く対応してもらえる施設という点から介護付き有料老人ホームへの入居という結論を出されました。
当初こそ老人ホームに実母をご入居させることに戸惑いを持たれていたご主人さまも、奥さまとなんどか話し合われた結果、奥さまの意思を尊重する形でご納得されました。
カウンセリングの第二フェイズはここで一端の終了となりました。
お母さまがご入居されてから2か月ほどして、奥さまからお便りをいただきました。
「先日は色々とありがとうございました。義母も当初こそ老人ホーム暮らしに戸惑いを見せていたようですが、最近では施設内でもお友達が出来ているらしく安定しています。私自身も今は気持ちも安定し前と同じ状態になったと思えるようになりました。この度は本当にありがとうございました。」
と書かれてありました。
カウンセラーとしてこのようなお便りをいただくことは本当に励みになります。
尚、この相談実例は奥さまから、同じような悩み、疲れを持たれている方へのお力になれるなら記事として公開していただいてもかまいません、との同意をいただいて記述しております。
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