広島で独居されていたお母さまとの同居
世田谷区は宇奈根の方からご相談をいただきました。
89歳になるお母さまは12年前にご主人を亡くされた後、10年間広島のご実家で独居されていました。
しかし10年前にご自宅の2階の階段から転げ落ちてしまい左足を骨折し入院となってしまった経緯を心配された息子さまがご自身が住まれている世田谷区宇奈根のご自宅にお母さまを呼び寄せ同居がスタートしました。
それまで軽い認知があることは理解していましたが、杖も使わずに自立で歩行ができることやお友達と楽しそうに電話をするなど軽認知であることから生活は特に問題がありませんでした。
ところが1年ほど経過すると、朝ご飯を食べ終わった後に
「朝ご飯はまだかしら?」
というようになってきたあたりから認知が進行している可能性があると思っていたそうです。
それでも、日中の大半はテレビを観て過ごされているため特に問題はありませんでした。
奥さまが日中、ご自宅でお仕事をされていても仕事部屋に入ってきて奥さまに話しかけるようになってしまいました。
それでもパソコン仕事であれば問題なかったのですが、オンライン会議など会社との打ち合わせなどがある際にも思うことがあれば仕事部屋に入ってきてしまうため、奥さまが疲弊してしまう事態に発展しました。
2年が経過すると認知が身体に出始めました。
お母さまが入浴された後に奥さまがお風呂に入ろうとすると湯舟に排泄物があることが頻繁にあるようになってきたのです。
最初こそ、年齢と思い湯舟のお湯を抜き、きれいに洗ってお風呂のお湯をためることで対処していたのですが、排泄物が家の床や階段の上にも落ちるようになってきました。
奥さまはご自宅でお仕事をされたのち、夕飯の買い物に出かけていたのですがある日、玄関のドアを開けると排泄物と分かるニオイが家中にすることに愕然としました。
すると、ご自身の身体にもそのニオイがついているのではないかと心配するようになりました。
それから1か月が経過し、お母さまの状況がさらに悪くなってしまったこと、奥さまが外に出ることを極端に嫌がるようになってしまったことなどから息子さまからカウンセリング依頼が入りました。
認知症が進行したことによる問題点
訪問カウンセリングを希望されていたため息子さまの職場近くまで訪問し、お仕事が終わった後、近くの個室居酒屋でカウンセリングを行うことになりました。
そこで前述の状況が明らかになりました。
息子さまは日々出社されているため奥さまほどストレスを抱えてはおりませんでしたがご家族がストレスにより笑顔が失くなってしまったことや、奥さまの言動が日々過激になっていくことをひどく心配されていました。
ヒアリングをした後、奥さまの現状を確認するため、奥さまから私宛にカウンセリングの電話をいただけるようにお願いいたしました。
その日の晩、奥さまからお電話をいただき、お母さまの状況なども見ていただきたいとのことで日程を決めてご自宅に訪問することとなりました。
認知症における在宅介護の限界の境界線
当日、奥さまの仕事終わりの時間にご自宅に訪問させていただきました。
玄関を開けられた奥さまは、
「ごめんなさい、少しにおうかもしれませんけどよろしくお願いします。」
と、仰られました。
マスクではありましたが私には排泄物のニオイを感じることはありませんでした。
目で見ている排泄物がニオイを補完した状態で脳内認識されていると感じました。
ダイニングで奥さまとのヒアリングを開始すると奥さまが悩まれていることがすぐにわかりました。
結論から申し上げると、
排泄物に対するアレルギー反応
であると言えます。
人間は本能的に排泄物に対して嫌悪感を抱きます。
奥さまはこうした心の働きにより少しづつ心が疲れてしまっていると分析しました。
しかし奥さまは本質的にそのことを理解してはいないと感じたため傾聴を使ってできるだけお話いただくようなカウンセリングプログラムを作ることにしました。
介護専門のカウンセリングの進め方について次ページで詳しくご説明していきます。