話し合えば話し合うほどに

ご相談者さまはなんとか現状を打開したく、ことあるごとにご主人さまに、

「あの時のことは確かに母が悪いと思うけど、もう年も年だしいい加減許してほしい」

と言っていました。しかし、何度言ってもご主人さまの態度は変わらず挙句の果てに、

「この話はもう聞きたくないし、これ以上いわれても困る。結論は変わらない」

とまで言われてしまったのです。それでも折を見ては話をしようと努力していました。

ところが、そのそぶりが見えるだけで、ご主人さまの機嫌が悪くなってしまうため最後には何も言えなくなってしまいました。

お母さまについても状況はあまりよくなく、ご実家に伺っても変わらず罵詈雑言を言われてしまいます。

コミュニケーションを取ればとるほどに人からけなされてしまうため、ご相談者さまは自分が何か悪いことをしているのではないかといった考え方を持つようになっていました。

お母さまの事を考えようとすると吐き気を催すこともあったそうです。

精神的な要因が身体にまで及んでいるのはかなり問題が深刻であると言えます。

カウンセリングで現状を確認し、どうすべきかを分析しました。

ストレス要因の分析と対応

ご相談者さまはお母さまのケースで3つの問題がストレスの要因になっていました。

1. お母さまの態度

2. ご主人さまの態度

3. 同居することが出来ない

現状を分析し把握したところで私はまず、介護制度や事例をいくつか説明しました。

介護とは同居だけが全てではありません。現代では生活が多様化しており、デイサービスやショートステイ、施設への入居や訪問介護サービスなどその人の生活に合わせたサービスがあることをご説明しました。

幸いにもご相談者さまはお母さまと近いところに住まれていたため面会に距離障壁はなく、また施設入居などについても柔軟な考えを持たれていました。

同居以外の選択肢を情報として提供することで、ストレス要因の1つが解消され状況が好転してきました。

カウンセリングとは「心の整理」を促すためのサポートが目的ですから、カウンセラーが何かを指示・指導することは基本ありません。

今回のケースで介護システムなどの説明をしたのは、ストレス要因の1つが「同居による在宅介護の拒否」であることから、介護とは在宅介護以外にもたくさんの方法があることについて説明をしました。

これは情報提供でありご相談者さまが心を整理するために有効であると判断しました。

このアドバイスは効果的でした。

介護に特化したカウンセリングでは不透明な介護システムや介護保険法などについて説明することがあります。

介護に関する知識が結果として心の整理につながることが多いからです。

ご相談者さまはご主人と相談して、訪問介護を利用することを選択されました。

介護士がお母さまのご自宅で料理や清掃、排泄処理などを行うようになり2か月が経過するとお母さまに少し変化が出てきたということでした。

それまで文句しか言わなかったお母さまが介護士さんが来る日を楽しみに待つようになってきたのです。

ご相談者さまにつらく当たるだけだったお母さまも、

「あなたもプロのヘルパーさんの技術を見て勉強して私を介護して頂戴」

というようになったそうです。

これによりストレス要因であった、「お母さまの態度」が解消されることになりご相談者さまの気持ちも少し落ち着いてきました。

また、訪問介護を始めたことでお母さまの心配が軽減されお母さまの介護問題が解消したこと、ご主人さまに同居相談をする必要が無くなったことで「ご主人さまの態度」を気にする必要がなくなりました。

そればかりか、ご主人さまから、

「お義母さんはその後、どうなの?たまには俺も顔出したほうがいいか?」

と、歩み寄るような発言があったそうです。その発言の裏には、ご主人さまもお義母さまのことについて言い過ぎた気持ちがあったこと、同居に対する自信がないことなどがあったようです。

訪問介護がここまでハッキリと効果を発揮するのは珍しいケースではあります。

状況が全て好転したことによりご相談者さまの状況が改善されてきたことを確認した上でカウンセリングを終了としました。

まとめ

【原因】車いす生活になってお母さまの生活リズムが変化しフレイル状態になってしまった

【ストレス要因】
・その結果、お母さまとご相談者さまとの関係値が変わってしまいストレス要因となる
・同居による介護に対してご主人さまの理解が得られず、ストレス要因となる
・同居という選択肢が達成できないことがストレス要因となる

【分析と対応】
・介護システムについて説明し同居以外でも介護ができる選択肢を説明
・訪問介護サービスの見つけ方や使い方を説明

【結果】
・訪問介護サービスの利用を開始
・介護士とのふれあいによりお母さまの態度が好転
・同居を不安視していたご主人さまのストレスが解消されたことで関係値が好転

ストレス要因のすべてに対応できたことにより介護問題の悩みはおおむね、解消した。

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